巨人坂本、その軌跡を確認する事でトレンドの変化を想う

今年の坂本は本当に凄かったです。

シーズン前半は、下半身に問題を抱えていたのか低調でしたが、シーズン後半における、あの打撃と、あの守備。

あの守備はいけません。

本当に守備範囲が広いです。

以前は、もっと荒々しい守備だったのですが、洗練された美しさを覚えるようになってきています。

あの位置のボールを処理してアウトにするのかっと、何度も思い知らされましたが、いやはや・・・

特に横浜の倉本にとって、あの守備は天敵と言って良く、凄いと思う事度々です。

2016年05月19日

倉本が、こうなって欲しい的なモデルケース、坂本の守備(5/18 対巨人戦)について

倉本の場合、打球方向を張られ易い打撃をしますので、その打球方向を張るような守備をされ易いです。

そして、坂本の場合、その動きが本当に素晴らしいかったです。

井端効果かもしれません。

井端が加入して以降、坂本の守備に変化を覚えますが、凄いですね。

近年、野球の質が急激に変化しているからなのか、古き良き時代の野球理論が、どうにも通用しないです。

中日が2013年に現場離れて久しいOBを大量雇用して苦戦しましたが(二軍で停滞が起きています。その爪痕から回復しつつあるのが今の中日です。)、

2011年に導入した統一球と、動画解析の向上により、継続して活躍出来る選手が、本当に少なくなってしまいました。

野球が変わって来ています。

中日の二軍における混乱も、統一球や、より精度が高まったデータ野球(動画解析により対策)とは無関係ではないと思います。

各球団、あの年代の選手が全体的に少ないです。

育成に定評がある広島さんも、梵と、菊丸で間に断層が生じていますが、妙に手薄なんですよね。

それ故に、坂本が記録した9年連続規定打席が私には燦々と輝いて見えます。

本当に輝いてみえます。

そんな選手、居ないですからね。

継続という意味でも、

スペシャルワンな坂本です。

そこに、成績的にもスペシャルになったわけですが、万遍のコトバをもって褒め称えたいです。

一野球ファンとして、一つの壁を乗り越えられた事が本当に嬉しいです。

さて、坂本の試行錯誤、停滞ですが、

これ、リーグの主要打者の多くが経験しており、具体的に何かといいますと、タイミングのとり方を変えています。

牧歌的だった1990年代なら、2010年の坂本をもって大型遊撃手の登場と確信をもって語れますし、2012年の統一球に対応した打撃をみて、その伸び代を覚えるのですが、

以降、坂本は一見すると停滞したような錯覚を覚える成績となります。

(実際は試行錯誤しています)

その試行錯誤を数字で確認してみたいです。

対右打率

2011年.246→2012年.287

対右出塁率

2011年.287→2012年.335

対右OPS

2011年.651→2012年.732

対右三振率 PA/K 三振率の方が一般的になりつつありますが使い慣れた数字を使います。6.0なら6.0打席に一回三振を喫します。

2011年6.0→2012年5.47

対左打率

2011年.291→2012年.360→

対左出塁率

2011年.357→2012年.406→

対左OPS

2011年.823→2012年.989→

対左三振率 PA/K

2011年7.6→2012年9.85→ 

統一球に対応出来た2012年、坂本は大きく数字を伸ばします。

具体的に何がといいますと、インフィールド内のヒット率が向上し、総ての数字が良化しています。

BABIPと言われますが、

2011年に.287だった数字を、.347と大きく向上させました。

その上に、対左の三振率が改善させた事で、打率.300を超える数字を記録しています。

RCWINでみても、を3.97(阿部を別格としますが、傑出した記録でした)を記録しリーグ屈指の打者として活躍しました。

広島菊池が今シーズン(2016年)記録した数字はRCWINで2.30ですが、菊池1.7人分の打撃貢献度を果たしたと言えば、その凄みがわかりますでしょうか?

それほど抜けた数字を2012年の坂本は記録しています。

そんな坂本が2013年以降、停滞したような状況になります。

対右打率

2011年.246→2012年.287→2013年.243

対右出塁率

2011年.287→2012年.335→2013年.316

対右OPS

2011年.651→2012年.732→2013年.664

対右三振率 PA/K

2011年6.0→2012年5.47→6.0

対左打率

2011年.291→2012年.360→2013年.314

対左出塁率

2011年.357→2012年.406→2013年.372

対左OPS

2011年.823→2012年.989→2013年.866

対左三振率 PA/K

2011年7.6→2012年9.9→2013年7.5

右に注目しますと、三振率自体は変わっていません。

にも拘らず、数字を多く落し理由。

打たされているわけですね。

BABIPを前年の.347→.295(打率は三振を母数に含まないBABIPより低くなりますので三振0でMAX打率.295という状態です)と大きく数字を落しています。

特に右に注目しますと、

前年、右に対し.351とBABIPが良かったのですが、.290と落しています。

運不運とも言われる数字ですので、前年の反動を受けたという解釈も出来ますが、打球を詰まらされていたというのが私の見解です。

この数字変化、坂本だけでなく好球必打を信条としている巨人打線全体に有効でして、

チームBABIPが2012年までリーグ最上位でしたが、2013年以降、リーグ最下位クラスに転落しています。

横浜がツーシムを多投した事で、巨人に対し優位に立った年がありましたが、巨人打線全体が貧打にあえぎます。

統一球が導入され、まず先行したのが投手側です。

細かくボールを動かす事でゴロを稼ぐ。

それに対抗できるような打撃技術を確立できていた選手が少なかったです。

バレンティンのように、力でもっていくような打者(2016年のギャレットが、そんな感じで広島や横浜のゴロボーラーに強かったです)が持て囃された時代でもありますが、

非力な打者が活躍し難くなっています。

巨人、藤村が停滞した理由でもあり、

記事発散するので、今回は触れませんが、広島が相対的に強くなった原因と推測していますが、

強く打球を飛ばす技術。

これが重視され始めます。

その為には、配球を読むと言うより(高速に上下、左右に細かく変化するボールが増えた事で球種を絞って打つのが難しくなっています。読み通りにキタァ、ラッキーで撃ちに行ったらシンをずらされるわけですね。)、引きつける必要があるのですが、

この辺の感覚が、

旧態依然としたコーチと、現場でズレテしまった時代でもあり、

その惨劇が、あの中日の散々たる二軍(投打にわたる惨状)の状態に通じ、坂本の停滞につながっていきます。

つまり、新たな引き出しを作る必要性に坂本は迫られたわけです。

阿部のようにピンポイントに配球を読むような打者もいますが、あのレベルにまで達するには、より研鑽を積む必要があり、

なかなかノムさんのような解説通りに打撃が出来なくなってきています。

球種、マトリックスが増えすぎて配球を読み切れないわけです。

結果、よりシンプルに来たボールを打つような打撃が求められ始めています。

MLBほどとは言いませんが、力対力の比重が大きくなり始めた時代変化ですね。

その対応で、

坂本はタイミングを変えて行くのですが、その結果起きたのが、

左右の成績の変化。

2013年までは、左に強く右に弱いですが、この数字が入れ替わるようになります。

これ、実はリーグの主要打者全員に確認できている数字であり、

筒香も、長野も、ヤクルト山田もです。

次回、その変遷を確認しつつ、坂本の今を語りたいです。

っと思ったのですが、没記事としました。

書く元気がなくなっています。(山口のFA騒動前後に書いています)

次の記事の補足になるので記事公開しますが、

継続して活躍する事の難しさを感じて欲しいです。

今の野球は昔との比較で野球の質が変化しているとしか言いようがないです。

元横浜の山口も、その対応に苦慮した選手でもありますが、

非常にタフな世界で選手たちは戦っています。

余談、筒香について

関連記事

祝、筒香1億円。その成長を振り返って見て雑感 2

にて語った通り、

2014年に左に苦戦していた筒香は、

2015年、右より左を得意とするような打撃を披露します。

そして、2016年、その関係性が逆転し、左右差がなくなりつつあります。

昔の感覚でいいますと、

左に強いというのは、そのまま不変な場合が多かったのですが、ヤクルト山田も、数字が変化していますし、

中日福田もです。(この人は、来季、要注意です。楽しみな打撃水準になりました。)

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データだけで見た長野の課題について雑感

長野も坂本に近い試行錯誤をしていますが、

打者受難な時代から、坂本のような打撃が主流になることで、投手が変わらなくてはならなくなる時代の変化も覚え、おそらくMLBに近くなるのですが、

NPBの近未来にMLBを覚え、一方でMLBと比較にならないほど、何回も対決する事で独自の発展を遂げつつあるNPB

若干、ガラパゴス化している懸念も覚えますが、その変化もNPBに限ってみますと興味深いです。

どう変化して行くか、楽しみな状況でもあります。