歴代シーズン補殺数記録でみるNPB史

前記事に引き続いて書こうと思ったのですが

守備というか、数字について、もう少し解説しておきたいと思います。

'数字を使う上で大切なのは、まずは、その数字が何によってもたらされているか、その背景を知る事と思っています。

'

例えば最多安打

最多安打=最優秀の選手かというと、そんなわけではないですよね。

あくまで、そのシーズンで最もヒットを打った選手であって、その面では優秀かもしれませんが、他の面では、そうと言えないかもしれません。

必要十分条件で言うなら、最多安打は、選手評価の必要条件であって十分条件ではありません。

つまりは、その選手を語る、多数あるうちの一評価という事になります。

最多安打と言う安打を打つと言う条件において、一番打者、打順がより多く回る打撃力の優位なチーム(DHのあるパは基本、有利です)、犠打が少ないチーム特性、対戦ピッチャー等々の、諸条件の影響から逃れられるものでなく、

それら様々なファクターの積み重ねにより数字は構成されています。

その数字を読み解く事によって、安打の重みが変わってきます。

盗塁もそうですが、巨人のようにグリーンライトを採用していないチームの場合、盗塁王になり難いです。

(チームとして盗塁成功率が高く、走る能力を保有しているが、後ろの打者との関係で走らせません。リスクを冒すときと、冒さない時の基準が明確。)

一方、横浜や広島のそれは・・・

首を傾げたくなる時もあります。

横浜と違い広島の場合、多少、マシになりましたが、それでも盗塁王になった丸の成功率は66%。

盗塁の一般的な損益分岐点は70%超えと言われていますので、その観点でみますとチームに損害を与えた可能性を否定できない盗塁王でした。

単純に数字の過多のみで、

上手い下手を論じるのは危険と言えば危険です。

という訳で、先日、語った補殺についての説明です。

歴代補殺数について

歴代シーズン補殺数の記録の多くは、黎明期と2000年代以降に記録されています。

では、1960、70、80、90年代の各野手が劣るのかと言いますと劣るとは言えないと思います。

むろん、基本的に技術の進歩(体調管理、トレーニング、考え方等々)がありますので、昔より今の方が上手い可能性はありますが、

その時代特性も大きく、それは無視できないと思います。

アメリカもスモールベースボール時代と、そうでない区分がありますが、

日本もそれに近いような部分があり、特に黎明期 1960が、それに該当します。

理由は簡単でボールが飛ばない時代だったから。

結果、その時代は内野手が打球を処理する比率が高かったです。

→2011、12年は、それまでとの比較で内野の処理が多かった可能性があります。

その後、ボールの品質が上がり打高投低の時代へ。

そして、2001年に小坂選手が登場する頃から、また、補殺数が増えていきます。

御存じの方も多いかもしれませんが、統一球が導入するまで、基本、ボールの選択は、当該主催チームにあり・・・

要は、打撃成績、投手成績は勿論、守備成績自体がかなりの影響を受けると言って良い状態でした。

これをもって、あの記録は・・・

なんて言うつもりはありません。

それを言い始めたら、球場の大きさが、元から違っていますし、対戦相手(投手、打者)も選べない時点で、元から不公平でもあり、

そう言うモノを含んだ数字、つまり、そう言うレギュレーションの基、勝ち取られた立派な数字としておきたいです。

では、2000年からは何が変わったのでしょうか?

ボール選定の影響もあるかもしれませんが、飛ばないボールの選定自体、以前からやっていまして、その球団所属の内野手が記録しても良さそうなのですが、記録できていません。

巨人の川相が活躍した時代、巨人は飛ばないボール(PFで0.6ぐらい)を使用していましたが、川相の補殺数は歴代シーズン記録の50以内にランクインしていません。

この辺り、データ活用の、あるなしと言いますか、守備戦術の進化の可能性を覚えます。

つまり2000年ごろから膨大なデータを処理する事が可能になった事で、意図的に打たせるを意識できるようになった可能性です。

むろん、ビックボールの権化。

巨人や広島(広島に関してはPFで2を超える超飛ぶボールを使用)、横浜・・・

が猛威をふるっていた時代でもあり、ロッテが主流だったとは言えませんが、打てないボールを選定する伴に、データをより進化させた形で利用しようと志向するチームが増え始めた時期と思っています。

日本野球の進化ともいえる部分かもしれません。

積極的にデータを活用する事で、投手、捕手、二遊間でからめ捕るような緻密な野球をするようになって来ています。

それが可能になった背景に、膨大なデータを処理できるITの普及が大きいかもしれません。(紙→デジタルへ)

→ 阿部捕手の成長もあるかもしれませんが、2006年以降、巨人も中日に近い野球を志向し始めています。

守備偏重ではないのですが、内野で仕留める野球。

そのキーパーソンの一人が坂本というわけです。

野村ID自体は、昔から考え方としてあり、だからこそ、日本の場合、スコアラーというモノがMLB以上に幅を利かしているのですが、

そのデータ活用術が、その時代辺りから一段上に上った印象があります。

MLBNPBで違うのは、二塁の特性でして、

MLBの最優秀のレンジファクターは5をちょっと超える程度なのですが、NPBのそれは、2000年以降、6を超えて行きます。

対戦数が多いからこそ出来る進化なのかもしれません。

その意味で、日本野球はかなり緻密になって来ています。

MLBの場合、二塁と言うよりショートに化け物がいます。

オジースミスとか、その代表格でしょうね。

で、登場したのが

アライバ

むろん、彼らの守備技術の素晴らしさもありますが、その守備戦術の進化も見逃せません。

中日が倒せないの曲でも歌われもしていましたが、

あのピッチャー、ゴロ(& 谷繁)しか打たせないは、事実と思います。

前回記事で、二岡の補殺数が少ないと言っていましたが、彼の補殺数もチーム戦術に影響さえれていた可能性を否定できません。

堀内政権下までの、豪快な野球、ピッチャーは三振(ホームランも打たれています)を考えますと、同情の余地はあります。

実はセイバー系の指標。

チーム戦術の影響から逃れる事が出来ません。

むしろ、チーム戦術が進化したからこそ、逆に見えなくなってきている部分もあり、

ゾーン系評価と、レンジ評価が一致しなくなって来ています。

フライ系投手主体のロッテの内野手の場合、その実力以上に過少評価されている可能性があります。

その対応で守備得点とかいろいろ補正が掛けられているのですが、なかなか、対応し来れていないかもしれません。

(レンジ系で評価が高いけど、ゾーンで評価が悪いのはSBの本田が有名です。 逆にレンジは。。。だけど、ゾーンで評価が高いのは片岡。

ただし、日本人内野手の場合、難しいボールを守備位置で簡単にしてしまうような内野手、仁志のようなタイプも存在しており、ゾーンだけ評価するのは危険です。また、その逆もしかりです。

結果、日本の場合、二塁のレンジファクターがアメリカのそれより優秀な場合が多いです。)

まぁ、そうは言っても、補殺数と言うのは最多安打のようなものであって、やはり結果として見た時、アウトに貢献しているのは事実ですから、優秀は優秀と思っています。

特に守備範囲をみる意味で参考にもなり、統一球以降、現状のNPBのレギュラー内野手の補殺数が360程度という事を考えますと、

450を優にこえていくような選手は凄いとさせて下さい。

まして500を超える菊池の場合は、谷繁がグランドに犬が紛れていると評したとおり、

ちょっと(笑)

いう数字と理解しています。

閑話休題

中日が、まるで緻密な野球をしているのかのように、語ってしまいましたが、その中心にいる谷繁は、

かつて、そんなサイン覚えられませんっと名言を吐いた方です。

野球の常道というより、常道を破るのが好きで、大洋時代よく監督と喧嘩していました。

いろいろ試行錯誤しながら、最後は大矢さんと出会って花開きますが、

データ重視というより、データをあえて忘れると言うか、その点で、森監督と反りが合わず、喧嘩別れしています。(干されました)

谷繁の場合、データ以上に、感性も重視しており、結果、中日の場合、谷繁がマスクを被るか、どうかで、その勝率に差がある状況です。

あの名古屋の低いPFも、谷繁の影響を感じざる終えず、

今回の記事連載シリーズで阿部捕手の成長と巨人の被本塁打の関係を書こうと思っていますが、それを考えると、捕手谷繁ってと思わずにはいられません。

そも、ナゴヤドーム特性を考えるとゴロでなくフライPで打ち取っても良いハズなんですよね。

阪神もそうなのですが、何と言うか阪神の場合、よーわかりません。

昨シーズン、阿部への見事な対応をみると、決して阪神のスコアラーの力が劣るとは思っていませんが、

一応、甲子園はフライ系です。

(PFが低いので外野が他の球団より、より関与する場合が多いです。というより、大きいの打たれても気にしなくて済むと言いますか・・・

まぁ、ロッテの外野陣と違い、記録の途切れたレフト金本やマートンを起用していますので、結果的になのかもしれません。)

それ考えると、いろんな意味で鳥谷って、凄いのねぇになるのですが、発散するので、今回は、しません。

因みに中日の守備戦術の細かな運用面に関し落合監督、関わっていません。

基本、森コーチと谷繁に丸投げです。

(職人気質なのでプライドを大事にします)

大まか方針は落合監督が決めていますが、

本当の好みは

4番俺が打って、試合をきめる野球。

城島一塁コンバート、ブラゼル、レフトへっと阪神に提言していた時期がありますが、そんな感じです。

谷繁的に言うなら、

俺が守って、点を与えない野球をしそうです。

成功体験ありますからねぇ。

さて、どうなるのでしょう。

次回、阿部編です。

阿部捕手の場合、ビックベースボールからデータ積極活用時代の過渡期に存在し、また、そのリードの手法(考え方)も変わって来ています。

その辺をデータを絡めつつ、まずは捕手阿部にスポットを当ててみたいと考えています。