前記事で山口の配球は井納のような投球をイメージしてしたのではないかと記述したが、その軸になるのはカーブであると思う。
配球配分でいうと両投手ともカーブの比率は決して高くない。
(6/1のロッテ戦で山口投手が投げたカーブ比率22%はかなり高い部類でしたが、一般的にカーブの比率が10%を超える投手は少ないです。超えるのは西武岸、SB摂津ぐらいでしょうか?)
が、井納、山口伴に配球配分の半分以上を基本的に占めるストレートを活かす為にカーブを両投手ともに活用している。
あとはピッチャー有利なカウントに持ち込めば、フォークを有効に使い打者を手玉にとるわけである。
井納に関しては調子が良いとフォークの配分が30%を超えるが、これは打者に対し相対的に有利故に、その焦りを利用して振らせているからである。
その前提は、追い込んでいるかどうか?
主導権を握れれば、山口もフォーク比率が高まったと思われるが、6月1日にロッテ戦ではそこまでいたらなかったようである。
それでも6回無失点。
大したものであると思う。
さて、近年、カーブを武器に投げる投手が減ったが、どうして減ったのだろうか?
これを識ることで、より山口の投球意図について考えたいと思う。
キーワードは
「狙っていなくても捕えられてしまうのがカーブ」
ヤクルトの中村捕手談である。
要は特段意識しなくも、させなくても打てしまうのがカーブなのである。
昨年の記事だが、現代に甦った古い球種カーブ
http://number.bunshun.jp/articles/-/545345
にて、
打者心理で書かれているが、
カーブは狙って打てる球種なのか? 打てない球種なのか?
で問えば、
打てるのである。
記事中、カーブの使い手として一人として広島の前田投手を取り上げているが、その前田でも、昨年のカーブの被打率は.300を超えている。
では、なぜ?前田を始め、現代のカーブの使い手は、そんなカーブを使うのだろう?
良く言われる緩急なのか?
それもあるかもしれないが、前田も、球界屈指のカーブの使い手、西武の岸もチェンジアップをカーブ以上に使っている。
カーブが廃れてしまったのも、このチェンジアップの影響が大であろう。
このチェンジアップ、カーブと違いストレートと同じ腕の振りから投じられるからだ。
投球の基本はストレート。
このストレートと対比させることで投手は打者を手玉にとる。
まっすぐか、落ちるか(フォーク)
スライドするか、シュートなのか
速いか、遅いか(チェンジアップ)
その系統からカーブは離れている。
以前は、緩急をつけると言う意味で重宝されたが、上位球種の登場により、その存在がかすれてきている。
また、当てやすい故か、ストレートに次いで空振りの取り難い球種でもあり、それもあって山口も中継ぎでは使いづらい球と表現してもいる。
では、そんなカーブを前田を始め、山口や井納はなぜ?使うのだろう?
前段に戻るが他の球種を活かす為に他ならない。
投手、打者ともに、同じような事を証言しているが目線がズレる効果。
テレビで見ていてもカーブは、その軌道の残像が良く残る球だが、打者も残るようであり、それがズレに繋がるようである。
前田のコトバを借りるのなら、
「カーブは、昔は多く使われていたのですが、それが廃れて少し前まではほとんど使われなくなっていました。最近では、また別の重要性を感じて使っている投手が増えてきたというのはあるんじゃないですかね。セ・パの打者で違いもあるとは思いますが、いずれにしても打者の目線をずらせる良い球だと思うので。1球挟むだけでもピッチングが楽になりますから」
このズレを利用する事で、井納はピッチングの幅を広げ、山口も、それに続こうとしている。
特に井納と、山口に関しては緩急をつけられる球種がカーブしかない為、打たれ易かろうと勇気をもって投げる必要があるわけである。
目線のズレを期待する意味で言うなら、見逃してもらうような配球が良いのだが、そこは打者心理でいう、合わなければ打たなくていいを上手く意識した配球。
井納のように初球、二球目にカーブをより多く投げるのが良いのだと思う。
その意味で井納・高城バッテリーは上手くカーブを使っていると感じる。
ドヤ顔で井納を語った時、その強気のピッチングを褒め称えたのは、被打率の高いカーブを投げ込む事で他の球種を活かしていると感じたからだ。
正直、山口、井納ともに引き出しが少なく感じる部分もあり、不安もあるが、このカーブを有効に使う事で是非、今シーズンは飛躍して欲しいとファンながら願っている。