プロ野球に流れはあるのかで始まり、
ランナーを多く出す投手=援護率が低いだろうという推論の基、推計を出してみた。
その結果は相関係数で-0.2と弱いながらも、定説のランナーを多く出す投手は援護率も少ない傾向がありそうな結果でもあった。
但し、
数字になれ親しんでいる人なら理解してくれると思うが、この-0.2。
年度に関係なくある事で、傾向としてはあるとは言えそうだが、点を取るという行為に強い影響があるかと言うと・・・
かなり心許ない数字でもある。
打者の証言を聞く限り、守り易い、スムーズに攻撃に入り易い投手がいるのは間違いないようだが、おそらく、そのリズム以上に、影響の強いファクターがあるのだろう。
2014年01月26日の記事にて、
WHIPと援護率についての関係についての考察
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/aaakkk/article/83
ベイの三嶋投手(四死球が極めて多い投手、BB/9=4.86)のように、ランナーを多く出しても援護をたくさんもらえる投手(相対援護率で1.1)もいれば、逆に三浦投手のようにランナーを出さなくても(BB/9=1.69)、援護が少ない投手がいる(相対援護率で0.65)事を説明したが、
→主戦捕手、鶴岡と高城の打力の差や、対戦相手の投手との相対関係が影響している模様。
今回は、ランナーを出さないわりに援護率が少ない投手として
巨人の澤村投手をピックアップし、なぜ?澤村の援護率が低いのか、その原因を分析してみたいと思う。
上記は、WHIPと、相対援護率(=援護率/所属チームの平均援護率)で割った数字である。
澤村の各年度ごとのWHIPと相対援護率の関係は
2011年 WHIP0.97 → 相対援護率0.85
2012年 WHIP1.33 → 相対援護率0.95
2013年 WHIP1.14 → 相対援護率0.67
である。
援護率は、常に1を下回っている状態であり、援護を多く貰っている投手とは言えないようである。
さて、2012年の数字をみると、WHIPと相対援護率との関係を見る限り、打者のリズムを崩しながら(四死球が多く、三振が多い、また、LOB率が高く防御率も良い)も、それなりに援護して貰っているとも感じるが、
2013年シーズン、タスク上、
巨人先発投手陣の中で最も相手打者を圧倒していた(平均的な投手と比べて、どの程度失点を防いでいるかを表すRSAAで澤村は14、なお、内海のそれは4)にも関わらず、援護が少なく、その勝敗は5勝10敗。
成績の割に勝てない投手との評価が定まりつつあり、あれこれ、その援護が少ない理由が語られているが、今回、その中身に関し、検証してみようと思う。
巨人の特徴に関して
先発で相対援護率の高い投手はいない
既定投球回数をクリアした先発投手は全員、相対援護率で1以下である。
相対援護率が1を超えない事に関しては、単純に巨人の得点パターンが前半でなく、後半にある事が原因だと思われる。
特に初回の攻撃に関してはセで最も得点が少なく、60点台は広島と巨人のみである。
7回程度まで投げ切る事で、他のチームより多くの援護が貰えそうだが、その分岐を越えられるかが重要なようだ。
原監督の投手起用
投手だけでないが、特別扱いをあまりしない。
(あえてしないタイプ、しない事で本人の自覚を促す。)
エースだから引っ張るのでなく、勝つことを最優先の野球をする。
→っとは言うがエースの自覚を促す意味で頑張らせるときもあり、言うほど、しない。する時に象徴的に行う。
また、そもそも、巨人の場合、後ろを投げる投手も優秀な為、当たり前だが、投手交代がされ易い環境でもある。
打線の軸、阿部
巨人の打線は阿部が打つかどうかであり、その依存度はかなり高い。
その影響力の高さはシーズン終盤と、日本シリーズでの苦戦でみてとれると思う。
去年、巨人打線として苦戦したのは阪神、ヤクルトだが、阿部の成績も大変悪く、その影響を感じざる終えない。
以上がざらっとした巨人の特徴である。
さて、澤村投手の特徴だが、
初回失点が多い投手
初回防御率が 5.72と最も悪く、2013年シーズンは立ち上がりに課題があった。
最も、初回が失点し易いのは、何も澤村だけの特徴でなく、得点分布上、初回が最も失点し易いので注意が必要。
初回におけるリーグ平均防御率は4.8。
澤村が残念のは、他の投手が、上手く、その初回を越えられている点。
杉内 2.3
内海 2.3
菅野 4.3
阪神戦が多い
最も登板した対戦相手は阪神戦の6回。そして、その援護率は0.69と全く点がとれない。
相対援護率で見た際、その数字は0.17。
實松とコンビを組み事が多い
澤村とのコンビで先発マスクを5回。
比率でいうと他の先発投手より2、3倍多い。
チームの主軸、阿部が澤村と組むと打てない
澤村と先発マスクを組んだ際の打率は.244とかなり低い。
中日戦以外は・・・
あまり良くない。
特にナゴヤドームで無類?の強さを誇る。
尚、阪神戦では総合でWHIP0.96と対戦別では抑えているのだが、防御率は3.86。
防御率1.80と名古屋では良績ではあるが、一人相撲な投球を澤村はしており、WHIPで1.64。
四死球率は5.4、被安打率も.276とよく打たれたが。。。結果的に点にならなかった。
一方、阪神戦。
甲子園でWHIP1.46、防御率5.4。
総合でみると阪神戦でWHIPが最も良いのは東京ドームでの阪神戦に好投している影響。
澤村の球場別データ
名古屋 防御率1.80 WHIP 1.64 投球回数20 援護率2.70
東京 防御率3.53 WHIP 1.12 投球回数63 2/3 援護率1.98
神宮 防御率7.00 WHIP 1.11 投球回数9 援護率1.29
注釈
巨人は神宮で最も点をとれていません。
甲子園の40、名古屋の36、神宮の25です。
ヤクルトの投手力と巨人打線との相対関係。
そのパークファクターを考えると不思議。
甲子園 防御率5.40 WHIP 1.46 投球回数11 2/3 援護率1.38
横浜 防御率5.25 WHIP 1.42 投球回数12 援護率1.29
広島 先発実績なし
注釈
巨人投手陣は、そのパークファクターの割に、東京ドームでホームランを打たれてなく、東京ドームで良績を残している投手が多いです。
名古屋、甲子園と東京ドームで差がないです。
東京ドームで、よく打ち、打たれないのですから、ホームでの勝率は高いです。
一方、神宮、横浜では、そのパークファクターに近い感じで良く打ち込まれています。
(相手打撃陣との相対関係もあるので、その割引に注意)
2000年代初期、東京ドームでの被ホームランも多かったのですが、徐々に減らしてきています。
いろいろあったので、書くのを断念しましたが、捕手阿部の成長曲線(チームの成長?)と一致するような感じで、東京ドームの地の利を抑えるようになって来ています。
それを考えると、名古屋の低いパークファクターも、谷繁がいる影響もあるかもしれません。
本当は両チームの抑え方のプロセスが違うので比較して書きたかったのですが・・・いつか機会があれば書きたいと思います。
澤村に対する分析結果
総合では確かに良いピッチャーと言える。
RSAAで前田、能見、メッセ、小川についでの成績でもある。
が、球場別、対戦別投球状況をみると、非常に不安定な感想を覚えざる終えない。
特に名古屋でのWHIP1.64、防御率1.8は、一人相撲ともいえる背信に近い不安定な状況。
東京ドームでは比較的、まともな投球をしているが、主戦捕手阿部の援護を受けられず、また、好投しいても、巨人打線が苦手としている阪神戦(というより阿部が苦手としている阪神戦)である事が多く、結果的に東京ドームでの投球内容と勝敗が一致しにくい。
阪神戦を除けば、東京ドームでの援護率は、巨人の平均援護率のそれに近くなるのだが、他での対戦状況(早い回でノックアウトされるので、巨人の特性上、援護を受けられない)があまりひどい。
初回失点が多く、それを挽回しようと踏ん張る影響で、中盤にスタミナ切れを起こし、踏ん張りきれない場合が多そうである。
ペース配分が苦手か?
一言で言うと、精神的に若いという事になる。
その点、杉内、内海は上手くペース配分をしている。
成績の割に援護率が低いに関して
東京ドームでの阪神戦がなければ、WHIP1.36と並の投手以下の成績。
成績の割(ランナーを出さない割)に援護率が低いのは東京ドームでの阪神戦に限る。
所々で相手を圧倒している投球が見られるが、その高いポテンシャルを活かしきれてない状況である。
総合的な成績では典型的な成績の割に勝てない投手の分類だが、データを層別すると、成績の割に勝てないのでなく、この成績だから勝てない投手と感じる。
初回失点が多いので、それを補えるようなチーム。
ヤクルトや、横浜等なら、場合によると、落ち着いて投球が出来るかもしれないが、全体的に不安定な感じを覚えずにはいられない。
本来の目的である、ランナーを出さない割に成績が伴わない、援護率が低いに関し、検証するには向かない投手と思われる。
→成績相応の勝敗
結局のところ、得点をとるという行為に関しては、このように様々な要因、ノイズがのる結果、層別しないデータでは弱い相関になるのだと思われる。
但し、層別をし過ぎると、今度はサンプル数が少ない事によるノイズの影響がのるため、その判定が難しくなると予想される。
その点は留意が必要。