WARの目的は過去の結果(成績)を基に選手過去個人の相対的な価値(勝利貢献度)の算出であってチーム成績をみる目的で作られてない。
個人成績観測目的の数字故にチーム成績とチームWARを直接紐づけするのには注意が必要である。(乖離が生じる前提の数字)
どうして乖離が生じるかは本稿の目的と異なるが理由を簡易に説明しておくと
WARは個人でコントロールできないシチュエーション別の数字を重視してなくアウトカウント関係ない数字でみている事に起因していると考えている。
采配は打順などで個人ではコントロールできない部分を整えられる部分がありWARの割に数字が良い場合、采配によるものである可能性が内在する。
内在するが断定はできない。
あくまでWARより数字が良い程度で留めておくのが妥当な表現ではある点については留意して欲しい。
そういった理由で実際の得失点とWARで計算される予想得失点では構造的にあるレベルの乖離が生じているわけである。
アウトカウント別の得点期待値の増減はご存じの通りである。
参考記事
WARではノーアウトの出塁とツーアウトからの出塁を同じにみている。
選手運用他で数字が変わるとしたら、この部分である。(流れの調整)
WARの割に勝てないチームとはLOB率が平均より大きくずれる2019年型のヤクルトや流れが整流化できてなく一出塁の価値が統計的に外れるチームに多い。
現在、広島が組んでるような打順では流れが悪くなり易いが(鈴木が孤立する)
その調整に各監督の手腕が出やすい。
わかっていても調整に苦戦する部分だろうか?
総じてチーム状態が悪い際バランスが悪いと本ブログで評しているがバランス悪いと統計学的数字から外れやすい。
今期で言うなら広島がバランスが悪く、戦力の割に勝てない状況に陥っている。
WARは期待得失点である。
その期待値から勝利貢献度を割り出している。
その期待得失点と実際の得失点で多少なりと乖離が生じるのは上記思想が理由である。
個人が過去記録した数字を勝利貢献度で割り出す事を目的としている以上個人ではコントロールできないシチュエーション関係ない形で期待得失点を算出するからである。
より相関が強くなるのは実際の得失点から計算されるピタゴラス勝率である。
そのピタゴラス勝率と実際の乖離を基に監督の良し悪しを判断するのが難しいのは
に書いている通りである。
引用すると、
監督の能力が影響を与えているとすれば、既にピタゴラス勝率に組み込まれている得失点の方だというのが妥当な推測です。
その得失点の期待値としてWARが位置しているがシチュエーションを意識してない数字故に、予想勝率(得失点が実際と離れる)と実際で乖離が生じる余地があり、その乖離を今回は采配起因としてあるのではないかとしている。
ラミレス采配に関して過去、何度か分析をしているが2017年倉本9番による最適化など采配起因と思われるプラス効果あり、それらが積み重なってWARの割に勝てているのでは?と報告して来たのは過去記事の通りである。
そんな数字であるWARだが野球が扱う数字としては相関が強い数字でもある。
個人成績の観測が目的とはいえ個人の勝利貢献度の加算の多いチームの勝率が良いのは直感でわかると思う。
ピタゴラス勝率を抜かせば野球の数字で見た時チームWARとチーム勝率は強い相関となっている。
先述した通りピタゴラス勝率と監督采配に関しては相関がないとされているが個人的にデータをまとめているとチームWAR(選手個々の成績から期待される得失点)の方が監督采配に相関強そうな感触(可能性)を覚えてはいる。
その数字でみるとラミレスは結果を出している監督である。
一方で、その実績が評価されてないのはWARの数字的重みをファンが感覚的に捉える事ができてないからと見ている。
ファン、解説者がWARを知らないというオチもあるが認知されてはないだろう。
打率3割、ホームラン30本、二桁勝利などの数字と価値が一致し易い一方でWAR40勝がどういう価値なのか?直感的に理解し難い可能性があり本稿の記事を執筆する動機となっている。
その価値を算出するに当たりセの2014~2019年のチームWARと勝率の散布図を作って相関係数を算出し回帰直線を引いて分析してみた。
使う数字はデルタのWARである。
まずセの2014~2019年のチームWARと勝率の散布図だが
縦軸が勝率、横軸がチームWAR(勝)である。
相関は0.89
回帰直線y=0.249+0.0639xチームWAR
ここで本ブログが良く指摘しているチーム戦力Aクラスに相当するWAR40勝を回帰直線にいれると勝率は0.505となる。
ほぼ5割。
これがAクラスを望む際の基本線となる。
参考記事
その勝率5割を期待できるチームWAR40勝を横浜は2014年以降12球団で唯一一度も記録した事がないチームでもある。
解説者が重視する打率や防御率などの旧来数字(総合指標でないから当然ではあるが)と勝率の相関はWAR程高くなく総合指標であるWARが抜きんでている。
結果、旧来指標でしかチームを見れない解説者が語るチーム像とズレ易いのが現状である。
さて、この
回帰直線y=0.249+0.00639xチームWAR
でみた時、ラミレスが過去記録して来た数字はどんな感じになるのだろう。
結果は以下の通りである。
ラミレス横浜の記録して来た数字 | ||||
チームWAR | 実際の勝率 | 予想勝率 | WAR順位 | |
2016 | 32.8 | 0.493 | 0.459 | 4位 |
2017 | 36.1 | 0.529 | 0.480 | 4位 |
2018 | 33.8 | 0.475 | 0.465 | 4位 |
2019 | 36.1 | 0.507 | 0.480 | 4位 |
通年に渡りチームWARから期待される予想勝率を上回っている。
かつ、横浜は一度もリーグ3位以内のWARを記録した事がない。
ラミレスに近い数字を記録している監督というと巨人原監督。
彼もラミレス同様、確認できる範囲では数字に近い、ないし数字以上の成績を上げている。
その原監督が運用上苦戦をしていたのが2019年。
予想勝率0.548に対し実際が0.546。
原監督がわずかではあるが唯一マイナスを記録した年である。
かなり追い詰められた采配(自滅しかけた)をしていたがラミレス横浜が想定外に頑張った結果だと思っている。
2位横浜のとの比較でチームWAR+10勝以上の差があり戦力抜けていたのに関わらず優勝して涙を流したのは、そのプレッシャー故だろう。
逆に通年に渡り数字以下のチーム成績を記録し続けたのは擁護も必要だが中日谷繁監督である。
予想勝率以下の数字を記録する場合はエクスキューズありチームバランスが大きく崩れた時である。
そのバランス調整をできずない監督が数字以下を記録し易い。
バランスが悪化する際には勿論情状酌量の余地。そのチーム特有の事情があるが
ラミレスや原は、実績上、その調整に長けた可能性が高い監督と考えている。
横浜の場合、チームバランスが崩れやすく躁と鬱を繰り返しているが丈夫な5ツール選手不在で選手層が薄いとバランスを崩しやすい。
その調整にラミレスが長けていて結果的に帳尻を過去あわせてきたのは過去記事で書いている通りである。
ラミレス横浜が記録した一点差勝敗は
2016年 23勝15敗
2017年 21勝13敗
2018年 18勝19敗
2019年 21勝15敗
2020年 8勝7敗
9/10現在
通算 91勝69敗 勝率0.57
セに慣れてなかった伊藤加入を切っ掛けとした混乱により一点差勝敗が悪化した2018年を除き一点差勝敗でもプラスをラミレスは記録している。
2018年の混乱もシーズン後半には修正しており実績上、本当にタフな監督である。
今期もタフな運用をし続けている。
戦力上巨人との差で生じている差は絶望的にも感じる。
それでもチームの誰もが諦めてないのは首位巨人に三連敗し優勝が現実的に感じなくなった広島戦で復調した事からわかる。
参考記事
この5年間でチームはタフにはなったと私個人は考えている。
一見するとズルズルいきかけている場合もあるが常に復調の目を探っている、そんなチームが今の横浜である。
2020 9/10現在のチームWAR
2020.9/10 | |||||||
チームWAR | 回帰直線から予想した | ||||||
投手 | 打者 | 総合チームWAR | 試合数 | 143試合換算 | 勝率 | 勝率 | |
横浜 | 13.4 | 5.4 | 18.8 | 71 | 37.86 | 0.515 | 0.491 |
ヤクルト | 8.9 | 4.4 | 13.3 | 69 | 27.56 | 0.413 | 0.425 |
中日 | 10.6 | 6.2 | 16.8 | 72 | 33.37 | 0.463 | 0.462 |
広島 | 11.5 | 5.8 | 17.3 | 69 | 35.85 | 0.443 | 0.478 |
阪神 | 11.9 | 6.3 | 18.2 | 69 | 37.72 | 0.508 | 0.490 |
巨人 | 11.7 | 15.9 | 27.6 | 68 | 58.04 | 0.656 | 0.620 |
9/10現在WAR上、巨人が圧倒的な数字を記録している。
さらに回帰直線から予想できる数字以上の勝率も記録しており万全にも感じる状況。
ラミレス横浜も予想より上の勝率を記録してはいるがベースの数字が悪く現状では届きそうもない。
これを覆すとしたらベースの数字の向上。
平良、今永、オースティンの復帰になるだろう。
しかし、残り試合も少なく厳しくタフな状況である。
それでもチームは前を向いて戦い続けるだろう。
その姿を結果如何に関わらず見守りたいと思う。
本記事でも触れていますが
WARとピタゴラス。
その数字の意味合いが違っていますが分かり難いかもですね。
9/10現在、得失点差で大きなプラスを横浜は記録していますがWARで予想される得失点より多くの数字を記録している可能性がある横浜の場合は別の解釈になる可能性があります。
つまり低WAR(高WAR)で良い(低い)得失点を記録していると別の解釈が生じる余地があるわけです。
ピタゴラス勝率は
先述した通り
監督の能力が影響を与えているとすれば、既にピタゴラス勝率に組み込まれている得失点の方だというのが妥当な推測です。
既に組込まれてまして監督の影響かどうか議論が難しい部分あります。
勿論、WARも同じですが、そういう背景の元推論しています。
記事でも書いていますが結果で構成されるピタゴラスより得失点期待値であるWARの方が監督采配の影響が出やすいと考えています。
WARの目的がチーム戦力を観測する事である。
それが目的などと語る方もいますが数字が理解されてなく残念に思っています。
どのような思想で立脚され設計されているのか確認して欲しいと常日頃感じていますがハードルが高いのかもしれません。
WAR0勝の意味について
代替候補で構成されたチームです。
143試合換算で30勝~40勝ぐらいと過去記事では推計立ててますが
引用
(一般的に二軍相当を意味するWAR0を記録した場合30~40勝とされています。)
y切片=WAR0勝時の勝率です。
今回使用した数字(2014~2019年のセのWARと勝率の分布)でy切片は勝率0.249と数字が出ていますが143試合換算で35勝となります。
二軍相当のチームで構成された場合シーズン勝敗は35勝程度。
WAR+40勝で勝率5割です。
現在のWARは試合数少ないため試行錯誤の過誤を受けやすく143試合で比較したデータで当てはめることに注意が必要ですが(これはピタゴラス勝率に関しても)
一応、上記のような分析結果になっています。
ラミレス横浜も限界のようです。
解任した方がよいと2018年に書いていますがより厳しさを覚えます。
ファン支持薄いともたないです。
一つの時代が終わりかけていますがしょうがないかな。
個人的にラミレスを擁護はしますが完全な監督ではないです。
次を意識した編成をチームはしており準備しています。
後は書きかけの二軍育成が上手く行かなった事に関しておりをみて分析していく予定です。
しなかったらすみません。